じゃがいも 馬鈴薯 Potato
基礎データ DATA
ジャガイモの旬(出回り時期)
※これはジャガイモの出回り量の割合をグラフ化したものです。農林水産省統計 青果物卸売市場調査 品目別:主要卸売市場計(2023年)を参考にしています
ジャガイモの概要
現在、日本で最も栽培されている野菜はじゃがいもです。2009年の出荷量は約200万トンもあります。
じゃがいもは土の中で成長するので「根っこ」だと思っている人もいるかもしれません。じつはじゃがいもは「地下茎(ちかけい)」という茎にデンプンがたまって肥大化したものです。同じイモ類でもさつまいもは根っこに該当します。
「馬鈴薯」という漢字は、本草学者の小野蘭山が著書に記したのが始まりです。しかし、当時中国ではじゃがいものことを馬鈴薯とはいわず、小野蘭山が別の芋類とじゃがいもを同一と考えて記したといわれています。それが訂正されないまま現在でも使われ続けているというわけです。
ジャガイモの歴史
じゃがいもの原産地は南米のアンデス高地で、紀元前から食べられていたといわれています。16世紀にスペイン人によってヨーロッパに伝わり、17世紀になって栽培が開始。19世紀初めにヨーロッパ全域に定着しました。
日本へは1600年前後にオランダ船によって長崎に渡来。そのときの船の出港地がインドネシアのジャガトラ(現在のジャカルタ)だったことから、「ジャガタライモ」→「ジャガイモ」と呼ばれるようになったといわれています。日本に伝わった当初はサイズが小さく味も悪かったため、おもに観賞用でしたが、高野長英がじゃがいもの有効性と栽培の奨励を「救荒二物考」(1836年)に著したことから普及しはじめました。
明治時代後期になると北海道で本格的に栽培が行われるようになりますが、その足がかりとなったのが有名な「男爵いも」です。男爵いもは、当時の実業家・川田龍吉男爵が外国から導入した「アイリッシュ・コブラー」という品種で、その質の高さから人気が広まり普及しました。
ジャガイモの選び方(見分け方)
皮がなめらかで薄く、ふっくらとして重みのあるものを選びましょう。大きすぎるものは中が空洞になっていることがあります。芽が出ているものや、皮が緑色になっているもの、またシワがあるものは避けましょう。
ジャガイモの保存方法
新聞紙や紙袋で包んで風通しのよい冷暗所で保存します。日光に当てると皮が緑色に変色し、有毒物質のソラニンが発生することがあるので注意してください。梅雨や暑い時期は新聞紙に包み、それをさらに乾燥しないようポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存してもよいでしょう。
じゃがいもを冷凍すると、凍った水分が膨張して細胞を破壊し、解凍したときにスカスカになってしまいます。どうしても冷凍したい場合は、ゆでてからマッシュ状につぶし、ラップに平たく包んでから冷凍するとよいでしょう。サラダやコロッケなどを作る際に役立ちます。
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ジャガイモの食べ方
煮物、揚げ物、スープ、焼き物など
じゃがいもの芽や緑色に変色した皮には「ソラニン」という毒素が含まれていますので、調理する際にはきちんと取り除くようにしましょう。ソラニンを多く摂取すると下痢や腹痛、吐き気などの中毒症状が起こります。
じゃがいもを切ってそのまま置いておくと切り口が褐変するので、切った後はすぐ水にさらしましょう。
肉じゃがやカレー、シチューなどに入れる場合は、最初に60~70度付近の温度で10分程度ゆでると煮崩れが起こりにくくなります。
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ジャガイモの栄養と効能
水煮:ビタミンC(21mg)、カリウム(340mg)
注目成分
クロロゲン酸
期待される効能
風邪予防、がん予防、高血圧予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、動脈硬化予防
ビタミンCが比較的多く含まれているので風邪予防や美容に効果が期待できます。じゃがいものビタミンCはデンプンに守られているため加熱しても失われにくいのがポイントです。また余分なナトリウムを排出させる作用のあるカリウムが豊富で、高血圧予防によいとされます。
じゃがいもの皮にはポリフェノールの一種「クロロゲン酸」が含まれています。クロロゲン酸には抗酸化作用があるといわれています。
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ジャガイモの種類(品種)
男爵
男爵薯はじゃがいもの代表的な品種で、ゴツゴツとした丸みのある形をしています。目はやや深く、果肉は白っぽくて、加熱するとホクホクとした食感になるのが特徴です。煮物にも使えますがやや煮崩れしやすく、粉ふきいもやマッシュポテト、コロッケなどに調理するのがおすすめ。明治時代に日本に導入され、国内でじゃがいもが普及するきっかけにもなった品種です。
メークイン
イギリス生まれの品種で、長卵形でくぼみが少なく、皮をむきやすいのが特徴。果肉が粘質なので煮崩れしにくく、加熱するとなめらかな食感になり、カレーやシチュー、ポトフなどの煮物に向いています。イギリスの行事「五月祭」の「女王」にちなんで「May Queen(メークイン)」と名付けられたといわれ、日本へは大正時代の初め頃に導入されました。
キタアカリ
「男爵薯」と「ツニカ」を掛け合わせた品種で、1988年(昭和63年)に品種登録されました。やや扁平な球形で、皮は白っぽい黄色でやや粗め。果肉は黄色くて男爵よりも甘味があり、ホクホクとした粉質で、コロッケやポテトサラダなどに適しています。火の通りが早く、男爵よりも煮崩れしやすいので調理する際には気をつけましょう。
インカのめざめ
インカのめざめは2001年(平成13年)に品種登録されたじゃがいもです。低温貯蔵によってショ糖が増すことで甘味が強くなり、栗に似た濃厚な風味になるともいわれます。卵形で皮は黄褐色をしていて、果肉は濃い黄色でやや粘質。ホクホクとした食感もあり、煮崩れしにくいので煮物にも使え、ポテトチップスやフライドポテトなどの揚げ物にも向いています。インカのめざめを改良した「インカのひとみ」もあります。
とうや
北海道の「洞爺湖(とうやこ)」が名前の由来で、1995年(平成7年)に品種登録されました。球状で黄褐色の皮はやや粗く、目は浅めで皮をむきやすいのが特徴です。果肉はやや粘質で黄色く、煮崩れしにくいので煮物に利用するのがおすすめ。ポテトサラダにも向いています。
デジマ
1971年(昭和46年)に命名登録された品種で、温暖な地域での栽培に適したじゃがいもです。北海道で交配が行われ、長崎県で育成。育成地の長崎県にある「出島」にちなんで「デジマ」と名付けられました。肉質は粉質と粘質の中間くらい。煮崩れはやや少なく、肉じゃがなどの煮物をはじめ、フライドポテトや粉ふきいもなどさまざまな調理に使えます。またデジマは「新じゃが」として出回ることが多く、皮がやわらかいので皮ごと調理することも可能です。
ニシユタカ
ニシユタカは春と秋に「新じゃが」として多く流通しているじゃがいもです。「デジマ」を親品種として長崎県で育成され、1978年(昭和53年)に命名登録されました。皮は薄い黄色で、果肉は淡黄色。やや粘質で甘味があり、火の通りは遅いですが煮崩れしにくく、カレーやシチューなど煮込み料理に向いています。新じゃがは果肉がみずみずしく、皮が薄いので皮ごと食べられます。
シンシア
フランスで育成された楕円形のじゃがいも。皮は白味のある黄色でつるりとしていて皮がむきやすく、果肉は淡い黄色をしています。煮崩れしにくい粘質で、食感はなめらか。甘味もあり、煮物やポテトサラダなどに向いています。
アンデス赤
皮が赤色のじゃがいもで「レッドアンデス」や「ネオデリシャス」とも呼ばれます。果肉は濃い黄色で、甘味があってクリーミーな舌触り。やや煮崩れしやすいので、煮物よりコロッケやポテトサラダ、ジャガバターなどがおすすめです。同じように皮の赤い「レッドムーン」という品種もあり、こちらは煮崩れしにくいので煮物に最適です。
キタムラサキ
皮も果肉も紫色をしたじゃがいも。北海道生まれの品種で、2006年(平成18年)に品種登録されました。紫色の果肉には抗酸化作用があるとされるアントシアニンが含まれていて、加熱すると少し青みがかった色になります。果肉はやや粘質で煮崩れが少なく、舌触りはなめらか。シチューやサラダなどにすると彩りが楽しめます。似た品種に「シャドークイーン」がありますが、シャドークイーンのほうがアントシアニンの含有量が多く果肉の紫色も濃いめです。
ノーザンルビー
皮が赤紫色で、果肉はピンク色をしたじゃがいも。「キタムラサキ」の開放受粉より選抜し、2009年(平成21年)に品種登録されました。形は長楕円で、肉質はやや粘質。煮物やフライドポテトなどに適しています。キタムラサキと同様にアントシアニンが含まれていて、加熱しても色が抜けないので食卓に彩りを添えてくれます。
トヨシロ
おもに加工用として栽培されている品種のひとつ。北海道で育成され1976年(昭和51年)に命名登録されました。目が浅く形がきれいで、油加工において重要とされる還元糖の含有率が低いため、ポテトチップスやフライドポテトの原料に適しています。同じくポテトチップス用に使われている「ワセシロ(伯爵)」という品種もあり、こちらは普通の「新じゃが」としても食べられています。またトヨシロを親に持つ「ホッカイコガネ」はフライドポテト向きですが、煮崩れしにくいので煮物にも適しています。
各地の年間収穫量 じゃがいも
円グラフと下表の割合(%)が違うときは?
上の円グラフの割合(%)と下の表の割合(%)の数値が違うことがありますが、その場合は下表のほうが正しい数値です。
下の表は出典である農林水産省のデータに記されている「全国の合計値」から割合を計算したものです。
上の円グラフも農林水産省のデータですが、こちらは全国ではなく主要生産地のみのデータなので、値が公表されていない都道府県は含まれていません。
出典:農林水産省統計
2022年のじゃがいもの収穫量のうち最も多いのは北海道で、約181万9,000トンの収穫量があります。2位は約9万7,600トンの収穫量がある鹿児島県、3位は約8万3,900トンの収穫量がある長崎県です。
栽培面積・収穫量の推移
出典:農林水産省統計
2022年のじゃがいもの栽培面積は約7万1,400ヘクタール。収穫量は約228万3,000トンで、出荷量は約193万3,000トンです。
ジャガイモの輸入先と輸入量
出典:財務省統計
ジャガイモはアメリカと中国から輸入されています。アメリカからの輸入量は約4万3,288トンで、ジャガイモ輸入量のほとんどを占めています。中国からの輸入量は約2トンで、割合はそれほど多くありません。
年別輸出入量
出典:財務省統計
ジャガイモは海外から輸入されています。2022年の輸入量は約4万3,290トンで輸入額は約40億3,378万円です。輸入量は前年と比べると4,100トン(約9%)減少しています。
主要生産国(上位5か国)
出典:FAOSTAT(2021年)
ジャガイモ生産の上位5か国は、中国、インド、ウクライナ、ロシア、アメリカです。1位の中国の生産量は年間約9,557万55トンで全体の約26%を占めています。2位のインドは年間約5,617万6,000トンで全体の約15%、3位のウクライナは年間約2,089万9,210トンで全体の約6%です。
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