さやいんげん 莢隠元 String bean
基礎データ DATA
サヤインゲンの旬(出回り時期)
※これはサヤインゲンの出回り量の割合をグラフ化したものです。農林水産省統計 青果物卸売市場調査 品目別:主要卸売市場計(2023年)を参考にしています
サヤインゲンの概要
さやいんげんは、いんげん豆を若採りしてさやごと食べる野菜です。甘納豆などに使われる「金時豆」や「大福豆」「紫花豆」などもいんげん豆の仲間ですが、これらはさやの中の豆だけを食べます。一方、さやいんげんは「どじょういんげん」や「モロッコいんげん」などのように、さやごと食べるのが大きな特徴です。
さやいんげんは「いんげんまめ」や「いんげん」などと表記されることもあり、関西地方では3度収穫できることから「さんどまめ」という別名もあります。
サヤインゲンの歴史
いんげんはメキシコ南部やグアテマラ、コスタリカ一帯が原産地で、南アメリカにおいて品種が分化したといわれています。1500年頃には中南米で広く食べられていて、コロンブスの大陸発見以降ヨーロッパにも伝播。さらにヨーロッパから北アメリカへ移住した人たちによって北米に持ち込まれ、広く栽培されるようになったそうです。なお、若いさやを食用にしたのはヨーロッパに渡来してからといわれています。
中国では16世紀の終わり頃に栽培されていたという記録があるそうです。日本へは1654年に中国からの帰化僧である隠元禅師によって伝来したといわれていますが、それが現在のさやいんげんと同じものかどうかは不明です。
現在のようなさやいんげんは、明治時代に入ってから政府が欧米から導入したものが元になっていて、今では全国で栽培されています。
サヤインゲンの選び方(見分け方)
豆の形がくっきり出ておらず、全体の太さが均一でピンと張りがあり、きれいな緑色のもの。豆がでこぼこしているものは育ちすぎでかたいことがあります。また黄色味がかったものやへたが変色したもの、やわらかいものは食味が劣るので避けましょう。なお、多少曲がっていても味に影響はありません。
サヤインゲンの保存方法
ラップに包むかポリ袋に入れ、さらに新聞紙で包むなどして冷蔵庫の野菜室で保存します。本来は低温に弱い野菜なのであまり日持ちはしません。2~3日以内に使い切るようにしましょう。食べきれない場合はかためにゆでて冷凍すれば1ヶ月くらいは保存できます。
サヤインゲンの食べ方
和え物、揚げ物、煮物、汁物、サラダ、炒め物など
スジがある場合は、調理をするときに両先端を折り、そこからスジをスッと引っ張って取り除きます。
長時間ゆでるとやわらかくなるので、歯ごたえを残したいなら加熱時間は短めにしましょう。
サヤインゲンの栄養と効能
ゆで:βカロテン(580mcg)、食物繊維総量(2.6g)、カリウム(270mg)、葉酸(53mcg)
注目成分
アスパラギン酸
期待される効能
風邪予防、貧血予防、がん予防、高血圧予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、動脈硬化予防、疲労回復、便秘予防
さやいんげんには、免疫力を高め風邪やがんの予防に効果があるといわれるβカロテンが比較的多く含まれています。また、便秘予防に効果のある食物繊維や、血圧の上昇を抑制して生活習慣病の予防に効果があるとされるカリウム、貧血予防によいとされる葉酸なども入っています。
そしてアスパラガスにも含まれるアミノ酸「アスパラギン酸」も含まれます。アスパラギン酸は疲労回復やスタミナ増強に効果があるとされます。
栄養成分表を見る
サヤインゲンの種類(品種)
さやいんげん
長さは13〜15cmほどで、ほんのりと甘味があり、やわらかいのにシャキッとした歯触りのよさが特徴。一般的に流通しているのは丸さやの「どじょういんげん」と呼ばれるもので、「ケンタッキー・ワンダー(尺五寸)」や「キセラ」「さつきみどり」「江戸川」など数多くの品種があります。
モロッコいんげん
さやが幅広くて平べったいさやいんげん。長さは15~20cmくらいで、幅が約1.5~2cmと大きいのが特徴です。地中海沿岸地域の品種を導入したもので、1976年(昭和51年)頃からタキイ種苗より販売されています。やわらかくて甘味があり、シャキシャキとした食感。炒め物や天ぷら、和え物などさまざまな料理に使えます。
紫いんげん
長さ13〜15cmくらいの紫色のさやいんげん。ゆでると紫色が落ちて濃い緑色になります。紫色を残したいなら短時間でさっと加熱するようにしましょう。ただし流通量が少ないため、普通の青果店ではあまり見かけることはありません。
黄色いんげん
長さ14〜15cmくらいの黄色いさやいんげん。ゆでても色落ちはしないのでサラダや煮物の彩りにピッタリです。こちらも紫いんげんと同様、流通量が多くないので、普通のお店ではほとんど見る機会はありません。
各地の年間収穫量 さやいんげん
円グラフと下表の割合(%)が違うときは?
上の円グラフの割合(%)と下の表の割合(%)の数値が違うことがありますが、その場合は下表のほうが正しい数値です。
下の表は出典である農林水産省のデータに記されている「全国の合計値」から割合を計算したものです。
上の円グラフも農林水産省のデータですが、こちらは全国ではなく主要生産地のみのデータなので、値が公表されていない都道府県は含まれていません。
出典:農林水産省統計
2022年のさやいんげんの収穫量のうち最も多いのは千葉県で、約5,060トンの収穫量があります。2位は約3,260トンの収穫量がある福島県、3位は約2,630トンの収穫量がある北海道です。
栽培面積・収穫量の推移
出典:農林水産省統計
2022年のさやいんげんの栽培面積は約4,460ヘクタール。収穫量は約3万3,100トンで、出荷量は約2万2,100トンです。
サヤインゲンの輸入先と輸入量
出典:財務省統計
サヤインゲンはオマーン、メキシコ、アメリカの3か国から輸入されています。オマーンからの輸入量は約497トンで、全体の90%近くを占めています。メキシコからの輸入量は約62.3トンで、全体の約11%程度です。アメリカからの輸入量は約2.7トンです。
年別輸出入量
出典:財務省統計
サヤインゲンは海外から輸入されています。2022年の輸入量は約562トンで輸入額は約2億8,559万円です。輸入量は前年と比べると5.5トン(約1%)減少しています。
主要生産国(上位5か国)
出典:FAOSTAT(2021年)
サヤインゲン生産の上位5か国は、アメリカ、モロッコ、メキシコ、フィリピン、トルコです。1位のアメリカの生産量は年間約64万6,882トンで全体の約47%を占めています。2位のモロッコは年間約19万9,642トンで全体の約15%、3位のメキシコは年間約12万5,020トンで全体の約9%です。
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