やまのいも 薯蕷 Japanese yam
基礎データ DATA
ヤマノイモの旬(出回り時期)
※これはヤマノイモの出回り量の割合をグラフ化したものです。農林水産省統計 青果物卸売市場調査 品目別:主要卸売市場計(2023年)を参考にしています
ヤマノイモの概要
ヤマノイモ属はアフリカやアジアのおもに熱帯、亜熱帯の多雨地域に多く分布していて、世界には600種以上あるといわれます。この中で食用できるものを「ヤム(yam)」と総称し、日本では「やまのいも」や「やまいも」と称します。そして「長いも」や「いちょういも」「つくねいも」「自然薯(じねんじょ)」などがここに分類されます。
長いもは円筒形で低温に強く、おもに北海道や東北で栽培されています。つくねいもは球形で近畿地方に多く、いちょういもは扇形や棒状をしています。自然薯はごぼうのように細長く、本来は自生しているものを指しますが、現在ではパイプ栽培されたものが流通しています。
やまのいもは、じゃがいもやさつまいもとは違って生で食べられるのが特徴。すりおろして食べることが多いため「とろろいも」とも呼ばれます。
ヤマノイモの歴史
長いもやいちょういも、つくねいもは中国の雲南地方が原産といわれています。紀元前から食べられていて、そこからアジア一帯に広まったとされます。日本へ入ってきたのは平安時代と考えられていますが、渡来時期がわかる資料はありません。なお、つくねいもの名前が最初に登場したのは「清良記」(1654年頃:諸説あり)といわれ、栽培の記録があるのは「百姓伝記」(1681~1684年頃)、または「農業全書」(1697年)以降です。
自然薯はもともと日本に自生していました。「日本書紀」や「正倉院文書」に「暑預」という文字があり、これが「薯預(じょうよ)」=「やまのいも」だといわれています。当時の状況から、やまのいもの中でも栽培用のつくねいもや長いもではなく、野生の自然薯だったと考えられています。
ヤマノイモの選び方(見分け方)
ずっしりと重みがあり適度な太さで皮がきれいなもの。長いもはひげ根は細かくて多いほうがよいといわれますが、ひげ根の少ない品種もあるため、必ずしもそうとはいいきれません。
カットしたものは切り口に変色がないかチェックします。1本まるごとの長いもは、太さがなるべく均一なものを選びましょう。
ヤマノイモの保存方法
まるごとのものは新聞紙に包んで冷暗所、または新聞紙で包んでポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存。状態や環境によっては1か月ほど持つこともありますが、目安は2週間くらいです。カットしたものはラップで包んで冷蔵保存し、数日中に使い切りましょう。
長いもはすりおろしたものを冷凍しておくこともできます。変色防止のため、皮をむいたら酢水につけてからすりおろしてください。また保存用の袋に入れるときは、平らになるように入れると使うときに楽です。
ヤマノイモの食べ方
とろろ、揚げ物、酢の物、蒸し物、お好み焼きなど
やまのいもはすりおろしてとろろにしたり、短冊切りや千切りにして食べるのが一般的です。またお好み焼きを作るときに、生地にとろろを少し加えるとふんわりと焼けます。
長いもは水分が多くて粘りが弱めなので、刻んで和え物や酢の物、サラダなどにして食べるとよいでしょう。サクサクした歯触りが楽しめます。もちろんとろろにしてもOK。また加熱するとホクホクするのでソテーや揚げ物にしてもおいしく食べられます。
粘りの強い自然薯やつくねいも、いちょういもはすりおろしてとろろご飯やとろろ汁、とろろ蕎麦などに最適。粘度が高いので、出し汁を適量混ぜるなどしてなめらかにすると食感がよくなります。
すりおろすと変色することがありますが、これはポリフェノールによるもので味に影響はありません。変色を防止するには、皮をむいたあとにしばらく酢水つけておきます。ぬめりも減少するので扱いやすくなります。またかゆみを感じたら酢水に手を浸すとかゆみを抑えられます。
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ヤマノイモの栄養と効能
長いも/生:カリウム(430mg)
やまといも/生:カリウム(590mg)
いちょういも/生:カリウム(590mg)
注目成分
マンナン、アミラーゼ(ジアスターゼ)
期待される効能
高血圧予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、動脈硬化予防、消化促進、胃もたれ
やまのいもの粘りは「マンナン」などのぬめり成分によるものです。マンナンには排泄を促して便秘を予防したり、糖質の吸収を抑える作用があるといわれています。
また消化酵素「アミラーゼ(ジアスターゼ)」が含まれているので、消化不良や胃もたれなどの予防にも期待できます。ただしアミラーゼ(ジアスターゼ)は熱に弱いので効果を期待するなら生で食べましょう。
利尿作用によりむくみを抑え、余分な塩分を排出することで血圧の上昇を抑える作用のあるカリウムも多く含みます。
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ヤマノイモの種類(品種)
ナガイモ(長いも)
50~80cmほどの長い棒状のやまのいもで直径は4~6cmくらい。店頭では20~30cmにカットされていることも多く、皮は黄土色でひげ根が生えています。ほかのやまのいもに比べると水分が多く粘りは少なめで、とろろや和え物、揚げ物にも利用できます。流通量が多く、1年中購入が可能。在来種のほか、「トロフィー」などいくつかの品種があります。また「とっくりいも」は長いもと自然薯との中間的な特性を持ちます。
ジネンジョ(自然薯)
長さ60〜100cmほどの細長いやまのいも。直径は3〜4cmくらいで、粘りが非常に強く深みのある味が特徴です。栽培にはパイプが使われることが多く、手間がかかるため流通量が少なくて価格は高め。天然ものはさらに少なく、店頭ではあまり見かけません。栽培用品種としては「稲武2号」などがあります。旬は11月〜2月頃。
ツクネイモ(つくねいも)
にぎりこぶしのような丸形のゴツゴツとしたやまのいも。おもに関西地方で栽培されています。粘り気が強く、すりおろしてとろろ汁にしたり揚げ物などにすると美味。また、まんじゅうなど和菓子の材料としても使用されます。奈良県の「大和いも」や兵庫県の「丹波山の芋」のほか、石川県の「加賀丸いも」や三重県の「伊勢いも」などがあります。
イチョウイモ(いちょういも)
扁平形でいちょうの葉に似ていることからこの名で呼ばれていますが、ばち形や棒状のものもあります。粘りは長芋とつくねいもの中間くらいで、すりおろしたとろろは濃厚な味わい。加工用としての需要も多く、はんぺんやがんもどき、まんじゅうなどにも使われます。地域によっては「大和芋(やまといも)」と呼ばれています。
むかご
長いもや自然薯(じねんじょ)が成長する過程で葉の付け根にできる丸く小さないも。サイズは1~2cm程度で、ほんのり甘味がありホクホクとしています。調理法としては塩ゆでやむかごご飯、素揚げ、バター炒めなどが一般的。基本的に皮ごと食べます。
各地の年間収穫量 やまのいも
円グラフと下表の割合(%)が違うときは?
上の円グラフの割合(%)と下の表の割合(%)の数値が違うことがありますが、その場合は下表のほうが正しい数値です。
下の表は出典である農林水産省のデータに記されている「全国の合計値」から割合を計算したものです。
上の円グラフも農林水産省のデータですが、こちらは全国ではなく主要生産地のみのデータなので、値が公表されていない都道府県は含まれていません。
出典:農林水産省統計
2022年のやまのいもの収穫量のうち最も多いのは北海道で、約7万7,500トンの収穫量があります。2位は約4万5,500トンの収穫量がある青森県、3位は約6,440トンの収穫量がある長野県です。
栽培面積・収穫量の推移
出典:農林水産省統計
2022年のやまのいもの栽培面積は約6,630ヘクタール。収穫量は約15万7,200トンで、出荷量は約13万3,300トンです。
ヤマノイモの輸入先と輸入量
出典:財務省統計
ヤマノイモは中国とベトナムから輸入されています。中国からの輸入量は約295トンで、全体の60%以上を占めています。ベトナムからの輸入量は約152トンで、全体の30%以上を占めています。
年別輸出入量
出典:財務省統計
ヤマノイモは海外から輸入されています。2023年の輸入量は約447トンで輸入額は約5億5,523万円です。輸入量は前年と比べると54.5トン(約11%)減少しています。
主要生産国(上位5か国)
出典:FAOSTAT(2021年)
ヤム(やまのいも)生産の上位5か国は、ナイジェリア、ガーナ、コートジボワール、ベナン、トーゴです。1位のナイジェリアの生産量は年間約6,117万1,001トンで全体の約69%を占めています。2位のガーナは年間約1,071万7,606トンで全体の約12%、3位のコートジボワールは年間約760万トンで全体の約9%です。
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