だいこん 大根 Japanese radish
基礎データ DATA
ダイコンの旬(出回り時期)
※これはダイコンの出回り量の割合をグラフ化したものです。農林水産省統計 青果物卸売市場調査 品目別:主要卸売市場計(2023年)を参考にしています
ダイコンの概要
大根は春の七草の1つ「すずしろ」としても知られ、日本人にとって昔から馴染み深い野菜です。生でも加熱しても、漬け物にしてもおいしく、さまざまな料理に利用することができます。
大根は葉に近い上のほうが甘味が強く、先端の下の部分には辛みがあります。その理由は、地上に近い上部は寒さで凍らないように糖度を上げるため甘く、そして先端のほうは土中の虫よけに辛味成分が効果的だからといわれています。
ダイコンの歴史
原産地については諸説ありますが、地中海沿岸や中央アジア、中国ではないかといわれています。その歴史は古く、紀元前3000~2000年頃にはエジプトで食べられ、中国でも紀元前500年頃には栽培が行われていたようです。イギリスやフランスなどヨーロッパ諸国で栽培が始まったのは15~16世紀頃だと考えられています。
日本へは中国、朝鮮半島を経て伝播しました。「古事記」の仁徳天皇の条に「大根(淤富泥:おほね)」の文字を含む歌があることから、奈良時代には伝わっていたと考えられています。また長屋王邸跡で発掘された木簡にも「知佐五束/大根四束……和銅五年十一月八日国足」という記述が見られます(和銅五年は712年)。これは貴族の屋敷に野菜を搬入した際の荷札ではないかと考えられています。
江戸時代になると栽培も本格化し、全国でさまざまな品種が誕生しました。現在多く出回っている「青首大根」が主流になったのは1970年代からです。
ダイコンの選び方(見分け方)
皮に張りとツヤがあり、ずっしりと重みのあるものがおすすめです。ひげ根の穴は少なめで、あまりゆがみがなく均一に並んでいるものが良品とされます。
葉付きの場合は葉が緑色でみずみずしく、変色していないものを選びましょう。葉が切られているものは、葉の切り落とし部分が乾燥していたり、葉の隙間から新しい葉が生えてきているものは鮮度が落ちています。またカットされたものを購入する場合は、断面にス※が入っていないかも確認しましょう。
※「ス(鬆)」とは小さな穴のことで、スが入ると水分が少なくなりスカスカになります。ちなみに「骨粗鬆症(コツソショウショウ)」の「鬆」と同じ漢字です。
ダイコンの保存方法
葉付きのものはすぐに葉を切り落とし、新聞紙かラップに包んで冷暗所で保存します。葉が付いたままだと葉が栄養と水分を奪い、味や風味が落ちたり、スが入る場合があるからです。カットした大根はラップに包んで冷蔵庫の野菜室へ入れます。
葉はすぐにしおれるので、できればその日のうちに調理しましょう。
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ダイコンの食べ方
煮物、サラダ、漬け物、刺身のつま、おでん、炒め物など
煮物として使う場合は下ゆでをしておくとよいでしょう。お米のとぎ汁もしくはお米をそのまま少し入れて水からゆがくと苦味が取れます。また皮は少し厚め(2~3mm)にむくと、口当たりがよくなります。
大根は部位によって味が変わります。上部は甘味があるのでサラダや大根おろし、漬け物に。中央部はほどよいかたさで甘味もあるので煮物に最適です。先端部分はややかためで辛味もあるので炒め物や味噌汁、辛味の好きな人はおろしや漬け物に使うとよいでしょう。
葉は漬け物や炒め物にするとおいしく食べられます。
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ダイコンの栄養と効能
皮むき/ゆで:カリウム(210mcg)
皮むき/生:カリウム(230mg)
葉/生:カリウム(400mg)、カルシウム(260mg)、βカロテン(3900mcg)
注目成分
アミラーゼ(ジアスターゼ)、オキシターゼ、イソチオシアネート
期待される効能
がん予防、高血圧予防、消化促進、胃もたれ、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、動脈硬化予防
ナトリウムの排出を促進するカリウムが比較的多く含まれているので、高血圧や動脈硬化、脳梗塞などの予防に効果が期待できます。
大根には胃腸の働きを活性化するいくつかの酵素も含まれています。「アミラーゼ(ジアスターゼ)」はデンプンを分解する働きがあり胃もたれや胸焼けに効果があるといわれています。同じく消化を助ける「オキシターゼ」という酵素は発がん物質を解毒する作用があるといわれ、がん予防にも期待できます。辛味成分である「イソチオシアネート」は血液をサラサラにする作用があるといわれています。
切り干し大根ではミネラル成分が濃縮されて、カリウムが3200mg、カルシウムが540mgになります。
大根の葉には骨や歯の形成に必要なカルシウム、がん予防や免疫力アップによいとされるβカロテンが含まれているので、葉付き大根が手に入ったら葉も調理して食べるようにしましょう。
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ダイコンの種類(品種)
青首大根
市場にいちばん多く出回っているのがこのタイプ。首の部分が緑色なので「青首」といわれます。太さが均一で長細く、重さは1〜2kgほど。甘味があってみずみずしく、おでんやふろふき大根をはじめサラダや漬け物、切り干し大根など幅広く使えます。
三浦大根
神奈川県三浦半島の特産で、中央部がふくらんだ大型の大根です。首の部分まで白い「白首大根」で、甘味と辛味を持ち合わせます。漬け物にしたり、また煮崩れしにくいので煮物にも最適。明治時代から昭和初期に普及していた「練馬大根」を改良したものといわれていて、昭和50年代まで多く栽培されていました。現在はおもに年末に出荷され、お正月のなますなどに利用されます。
聖護院大根
「聖護院大根(しょうごいんだいこん)」は京都の伝統野菜として知られています。1〜2kgくらの丸い形で、肉質は緻密でやわらかく、甘味が強いのが特徴。煮崩れしにくく味もよく染み込み、煮物に最適です。また千枚漬けにしてもおいしく食べられます。
桜島大根
かぶのような丸い形で重さが7~20kgにもなる大型の大根。鹿児島県の特産で江戸時代から栽培されています。肉質はやわらかくて味が染み込みやすく、煮崩れしにくいのでおでんやふろふき大根に最適。また大根おろしや漬け物、切り干し大根などにも向いています。旬は1月~2月頃。
辛み大根
小ぶりで辛味の強い大根の総称。サイズは10~20cmくらいで、その多くはふっくらと丸みがあります。水分が少なく、おろしてそばやうどんの薬味として使うのが一般的。長野県や京都府など各地で栽培が行われています。
黒大根
皮が黒くて中身は白というユニークな姿をした大根。ヨーロッパが原産で、円筒形のものと丸形のものがあります。少し辛味と苦味があり、かためでコリコリとした食感です。皮ごとすり下ろして大根おろしにしたり、皮ごと切ってソテーや煮込み料理、サラダなどにすると一風変わった色彩が楽しめます。
亀戸大根
伝統野菜のひとつで、江戸時代~大正時代まで東京都江東区亀戸周辺で多く栽培されていた大根です。長さが25~30cmくらいと小さめで、肉質が緻密で少し辛味があり、浅漬けやぬか漬けにすると美味。現在はわずかながら葛飾区などで生産されています。
赤大根
皮が赤い大根。皮が真っ赤なものや赤紫色のもの、中身まで色が付いているものなど品種によっていろいろあります。皮が赤くて中が白い中国系の大根は、甘味があって緻密で歯ごたえもよく、サラダや漬け物、おろしなどに向いています。小型の「レディーサラダ」は「三浦大根」と外国の大根を交配して誕生したもので、甘くてやわらかくみずみずしいのが特徴。おもに神奈川県三浦半島で栽培されていて10月〜3月頃に出回ります。
紅芯大根
丸みのある中国系の大根で、サイズは300~400g程度。皮は白~黄緑色で、カットすると果肉は鮮やかな紅色~赤紫色をしています。甘味があって水分も多くシャキシャキした食感なので、色を生かしたサラダや甘酢漬けなどに向いています。ゆでると色が少し薄くなります。
ラディッシュ
ヨーロッパ生まれの大根で和名は「二十日大根」。和名の由来は20日ほどで収穫できることから付けられたそうです。皮が赤くて中が白い2cmほどの丸型が主流ですが、白い皮や紫色のもの、長さ5cmほどの円筒形のものもあります。生のままサラダにしたり、甘酢漬けなどに使われます。
練馬大根
東京都の練馬地方で江戸時代から栽培されている大根です。上部が緑色にならない「白首大根」で、サイズが長いのが特徴。大きいものは70~100cmになることもあります。練馬大根は伝統野菜として知られていますが、昭和初期頃から生産量が減り、現在はほとんど流通していません。品種としては「練馬尻細大根(沢庵漬用)」や「練馬秋づまり大根(煮食・漬け物用)」があり、11月中下旬頃に収穫時期を迎えます。
ビタミン大根(青長大根)
中国原産の「青長大根」で「青大根」とも呼ばれます。皮と果肉の半分ほどが緑色になるのが特徴で、サイズは20〜25cmくらいと短くて太め。栄養素を多く含むことからビタミン大根と呼ばれるようになったそうです。果肉は緻密で辛味は少なく、特に緑色の部分は甘味があり、シャキシャキとした食感。浅漬けやサラダなどに最適です。一代交配種(F1)のビタミン大根もあります。
各地の年間収穫量 大根
円グラフと下表の割合(%)が違うときは?
上の円グラフの割合(%)と下の表の割合(%)の数値が違うことがありますが、その場合は下表のほうが正しい数値です。
下の表は出典である農林水産省のデータに記されている「全国の合計値」から割合を計算したものです。
上の円グラフも農林水産省のデータですが、こちらは全国ではなく主要生産地のみのデータなので、値が公表されていない都道府県は含まれていません。
出典:農林水産省統計
2022年の大根の収穫量のうち最も多いのは千葉県で、約14万4,900トンの収穫量があります。2位は約12万8,800トンの収穫量がある北海道、3位は約10万7,300トンの収穫量がある青森県です。
栽培面積・収穫量の推移
出典:農林水産省統計
2022年の大根の栽培面積は約2万8,100ヘクタール。収穫量は約118万1,000トンで、出荷量は約98万6,600トンです。
ダイコンの輸入先と輸入量
出典:財務省統計
ダイコンは8か国から輸入されています。輸入先トップは中国で輸入量は約3,894トン、全体の90%以上を占めています。2位はオーストラリアの約77.5トンで全体の約2%程度です。3位はオランダの約59.4トン。4位は約29.6トンのメキシコと続きます。
年別輸出入量
出典:財務省統計
ダイコンは海外から輸入されています。2022年の輸入量は約4,084トンで輸入額は約4億4,706万円です。輸入量は前年と比べると1,508トン(約59%)増加しています。