くわい 慈姑 Kuwai
基礎データ DATA
クワイの概要
くわいは年末に出荷量が伸びる野菜で、おもにおせち料理に使われます。ピンポン玉くらいの丸い実の部分(塊茎)から数cmの芽が伸びていて、その「芽(目)が出る」という姿から縁起物とされているのです。
くわいという名前は、「鍬芋(くわいも)」から来ているといわれ、芽が鍬に似ていることが由来だとか。食用にしているのは日本と中国だけのようです。
クワイの歴史
くわいは中国南部が原産地とされていて、日本へは平安時代には伝わっていたといわれています。平安時代の書物「本草和名」では「烏芋(くわい)」の項で「於毛多加(おもだか)」「久呂久和為(くろくわい)」とあり、同じく平安時代の「和名抄(わみょうしょう)」でも「烏芋」が紹介されています(※ただし、これらはカヤツリグサ科の「黒くわい」を指している可能性が高いようです)。
青くわい(オモダカ科)が、いつ頃から食べられていたのかは定かではありませんが、少なくとも江戸時代には広く食べられていたようです。貝原益軒の「菜譜」(1704年)では、くわいの栽培方法や食べ方についての紹介のほか、吹田くわいのことも「小にして味よし」と記しています。また、同じ項目のところで、カヤツリグサ科の「烏芋(黒くわい)」も紹介しています。
クワイの選び方(見分け方)
芽がしっかりと伸びていて、皮が乾燥しておらず光沢のあるもの。色はなるべく青みのきれいなものがよいでしょう。サイズは直径4cmくらいまでを目安に。素揚げにする場合は直径1.5cm~2cmくらいの小さいものがおすすめです。
クワイの保存方法
くわいは水性植物なので乾燥させないことが大切です。ボールなどの容器に水を張り、その中に入れて冷蔵庫に入れておくとよいでしょう。水は時々を取り替えてください。
ラップや湿らせた新聞紙などで包んでポリ袋に入れ、冷蔵保存してもOKですが、水に浸しておくほうが長持ちするようです。
クワイの食べ方
煮物、炒め物、揚げ物など
くわいはアクが強いので、皮をむいたらすぐに水にさらします。さらにお湯(または米のとぎ汁)で1~2度ゆでこぼしておくと、えぐみを抑えられます。
皮をむくときは芽を切り落とさないようにしましょう。基本的に芽も食べることができます。芽は好みの長さにそろえ、皮は底から上に向かってむくとよいでしょう。
おせち料理には含め煮が一般的ですが、薄くスライスしてチップスにしたり、小さいものは素揚げにしても美味です。
クワイの栄養と効能
ゆで:カリウム(550mg)、葉酸(120mcg)、食物繊維総量(2.8g)ビタミンB6(0.3mg)
期待される効能
高血圧予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、動脈硬化予防、貧血予防、便秘予防
くわいには血圧の上昇を抑制する作用があるとされるカリウムが多く含まれています。また、整腸作用のある食物繊維や、血を作るビタミンといわれている葉酸、エネルギー代謝をサポートするビタミンB6も比較的多く含みます。
そのほかにリンや亜鉛、銅などのミネラルも野菜の中では多めです。
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クワイの種類(品種)
青くわい
国内で流通しているくわいの多くは青くわいです。扁球形で皮が青みがかっていて、おもに埼玉県や広島県で栽培されています。肉質がやわらかくホクホクとした食感が特徴。別名「京くわい」や「新田くわい」ともいわれます。京野菜や加賀野菜としてのくわいも在来の青くわいです。出回り時期は11月下旬から12月下旬頃。
吹田くわい
大阪府吹田市近郊で栽培されているくわいで、この地域で誕生した歴史の古いくわいです。塊茎が小さく皮は青〜赤紫色で苦味が少なめ。口当たりのよい緻密な肉質でくわいの中では一番食味がよいとされています。小粒なので「姫くわい」ともいわれ、なにわの伝統野菜の1つに指定されています。
吹田くわいの関連リンク
大黒くわい
青くわいや吹田くわいはオモダカ科ですが、この大黒くわいはカヤツリグサ科なので別の種類の植物です。皮が黒く果肉は白色。中華料理でよく使われ、シャキシャキした歯触りが魅力。炒め物や揚げ物などに使います。ちなみに、日本に古くから自生していた「黒くわい」もカヤツリグサ科なのでこの大黒くわいとは近縁になります。
大黒くわいの関連リンク
各地の年間収穫量 くわい
円グラフと下表の割合(%)が違うときは?
上の円グラフの割合(%)と下の表の割合(%)の数値が違うことがありますが、その場合は下表のほうが正しい数値です。
下の表は出典である農林水産省のデータに記されている「全国の合計値」から割合を計算したものです。
上の円グラフも農林水産省のデータですが、こちらは全国ではなく主要生産地のみのデータなので、値が公表されていない都道府県は含まれていません。
出典:農林水産省統計
2022年のくわいの収穫量のうち最も多いのは広島県で、約118トンの収穫量があります。2位は約53トンの収穫量がある埼玉県、3位は約10トンの収穫量がある茨城県です。
栽培面積・収穫量の推移
出典:農林水産省統計
2022年のくわいの栽培面積は約23ヘクタール。収穫量は約195トンで、出荷量は約191トンです。