さつまいも 甘藷 Sweet potato
基礎データ DATA
サツマイモの旬(出回り時期)
※これはサツマイモの出回り量の割合をグラフ化したものです。農林水産省統計 青果物卸売市場調査 品目別:主要卸売市場計(2023年)を参考にしています
サツマイモの概要
焼き芋や天ぷら、スイートポテトなどいろいろな調理法が楽しめて、ホクホクと甘くておいしいさつまいも。豊富な食物繊維により、腸の調子を整えてくれるのも魅力です。
世界には3000~4000種ものさつまいもがあるといわれていますが、日本で栽培されているのは数十種類ほどだそうです。東日本では「ベニアズマ」が主流で、西日本では「鳴門金時」など「高系14号」のものが多く流通しています。またお菓子や焼酎などにはそれぞれの用途に合った専用の品種が栽培されています。
さつまいもは「唐芋(からいも)」とも呼ばれますが、「唐」は外国から入ったものという意味です。また漢名は「甘藷(かんしょ)」で「甘い芋」という意味。そして「さつまいも」という名前はもちろん「薩摩」が由来です。
サツマイモの歴史
メキシコ中央部からグアテマラ辺りの中南米が原産地といわれています。紀元前3000年頃にはメキシコなど熱帯アメリカで栽培されていて、紀元前1000年頃にはポリネシアにも伝わっていたそうです。
ヨーロッパへはコロンブスによってもたらされましたが、気候が合わずあまり普及はしませんでした。その後、インドや東南アジアに伝わり、16世紀の終わり頃に中国へ伝播。さらに17世紀初頭に中国から琉球(沖縄)を経て薩摩(鹿児島)にやってきました。
さつまいもはやせた土地でも栽培でき、すぐに薩摩に根付きました。その後、少しずつ栽培地域が北上していきましたが、各地で起こる凶作や飢饉を度々救ったことから栽培が奨励され全国に普及しました。それと同時に品種改良も進んでさまざまな優良品種が誕生し、現在に受け継がれています。
サツマイモの選び方(見分け方)
皮に張りがあり、均一な色をしているのがよいさつまいもです。傷やシミ、シワがあるものは避けたほうがよいでしょう。表面に蜜が浮いて固まっているものは糖度が高いといわれます。
ひげ根の多いものは繊維が多い傾向にあるので、なめらかな口当たりを求めるならひげ根の少ないものを選ぶとよいでしょう。また細いさつまいもは、ずんぐりと太っているものに比べて繊維が多いといわれます。
サツマイモの保存方法
低温と乾燥に弱いので、冷蔵庫には入れず、新聞紙に包むか段ボール箱に入れて、風通しのよい冷暗所で保存します。13~16度くらいが適温です。
また芋掘りなどで新鮮なものを入手したときは、収穫直後に食べるよりも5~10日ほど風通しのよい場所で陰干ししたほうが甘味が増します。
さつまいもは冷凍保存には向いていませんが、加熱してペーストにしたものや、焼いたり蒸したり調理したものを冷凍保存することは可能です。
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サツマイモの食べ方
焼き芋、揚げ物、ふかし芋、煮物、お菓子、干し芋など
さつまいものアクは皮の下に多いので、煮物にする場合は少し厚めに皮をむくとよいでしょう。また包丁でカットしたら、変色を防ぐために水にさらします。水が濁ったら2~3回水を取り替えましょう。
さつまいもは加熱するとでんぷんが糖に変わり甘味が増します。電子レンジを使うと手軽ですが、一気に加熱するとあまり甘味は強くなりません。糖度を高めたい場合は、65~75度くらいの低温でじっくりと加熱するのがおすすめ。さつまいものでんぷんは65~75度の温度帯で糖化されるので、この時間帯を10分ほど維持するとよいでしょう。
栗きんとんなどでさつまいもを黄色く仕上げたいときは、クチナシの実や焼きみょうばんを使用するのが一般的です。
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サツマイモの栄養と効能
蒸し:カリウム(490mg)、ビタミンC(20mg)、食物繊維総量(3.8g)、炭水化物(31.2g)
注目成分
セルロース、ヤラピン、アントシアニン(紫肉種)
期待される効能
便秘予防、風邪予防、高血圧予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、動脈硬化予防
さつまいもは食物繊維が多く含まれるので、腸の状態を整えたり便秘予防に効果が期待できます。さつまいもの持つ「セルロース」という食物繊維は、血液中のコレステロールを抑制したり血糖値をコントロールする作用があり、生活習慣病の予防によいとされます。
また切ったときに出る乳白色の液体は「ヤラピン」という成分で整腸作用があるといわれます。ヤラピンは加熱しても減少しにくく、便秘予防に効果があるとされています。
さつまいもにはビタミンCも含まれ、加熱しても損失しにくいのがポイント。含有量は特別高いわけではありませんが、さつまいもは一度にたくさんの量を食べられるので、免疫力アップや風邪予防によいでしょう。
果肉が紫色のさつまいもにはアントシアニンが豊富に含まれています。アントシアニンは毛細血管を強化したり、活性酸素の除去に効果があるといわれています。また果肉がオレンジ色のさつまいもには抗酸化作用の高いβカロテンが含まれます。
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サツマイモの種類(品種)
ベニアズマ(紅あずま)
関東を中心に東日本で多く栽培されている品種。「紅あずま」や「紅東」などとも表記されます。皮は濃い赤紫色で、果肉は淡黄色。繊維質が少なめで食味がよく、甘味が強いのが特徴です。ホクホクとした粉質ですが貯蔵することでしっとり感が増し、焼き芋やふかし芋、天ぷら、お菓子の材料など幅広い用途で使えます。「関東85号」×「コガネセンガン」の交配で農業研究センターが育成し、1984年(昭和59年)に命名登録しました。
高系14号
高知県農事試験場で選抜・育成された品種で1945年(昭和20年)に命名登録されました。皮は赤褐色で、果肉は淡黄色。甘味が強くやや粉質で少しねっとり感もあり、焼き芋やペーストなどに向いています。おもに西日本で栽培が行われていて、お菓子の加工用にもよく使われています。「高系14号」から選抜されたものに「鳴門金時」や「五郎島金時」「愛娘(大栄愛娘)」「土佐紅」などがあります。
鳴門金時
関西を中心とした西日本で多く流通しているさつまいも。「高系14号」の選抜系統で、皮は赤紫色で中は薄い黄色です。甘味が強く粉質でホクホクとしていて貯蔵性がよいのが特徴。おもに徳島県鳴門市の砂地で栽培されています。なお「なると金時」という表記は商標登録されていて、徳島県の特定の地域で作られたものだけが「なると金時」として出荷されます。またJA里浦から出荷されるなると金時は「里むすめ」というブランドで流通しています。
五郎島金時
加賀の伝統野菜のひとつで「鳴門金時」と同様に「高系14号」から選抜されたさつまいもです。金沢市五郎島地区で栽培されていて、皮は赤紫色で中は薄い黄色。甘味が強くホクホクとしています。なお「五郎島金時」という名前は商標登録されていて、指定農家で作られたものだけが名乗ることができます。
安納いも
「安納いも」は鹿児島県種子島の在来種です。在来の安納いもから選抜したものに「安納こがね」と「安納紅」があり、どちらも1998年(平成10年)に登録されています。皮の色は、安納こがねが淡黄色で、安納紅は赤褐色。果肉はどちらもカロテンを含んだオレンジ色で甘味が強く、加熱するとねっとりとした食感になります。蒸してもおいしいですが、焼き芋のほうが特に人気。安納こがねは「安納もみじ」と呼ばれることもあります(JA種子屋久の登録商標)。
コガネセンガン(黄金千貫)
皮も中身も白っぽい黄色をしたさつまいも。おもに芋焼酎の材料として使用されていますが、でんぷん質が多くホクホクとして甘味があり、ふかしたり焼き芋や天ぷらにしてもおいしい品種です。九州農業試験場で育成され、1966年(昭和41年)に命名登録されました。鹿児島県を中心に栽培が行われています。
種子島紫
種子島の在来種で、皮がベージュ色で果肉が紫色をしたさつまいも。食感がホクホクとしていてお菓子の材料としても使用されます。また「種子島ゴールド」と「種子島ろまん(種子島ロマン)」は、この在来種から選抜された品種です。種子島ゴールドは果皮が白っぽい淡黄色で上品な味わい。種子島ろまんは果皮が赤紫色で、芋焼酎の原料としても使用されています。
パープルスイートロード
農研機構作物研究所が育成し、2004年(平成16年)に品種登録されたさつまいも。「九州119号」と「関東85号」など5品種による多交配で誕生しました。形は紡錘形で皮は赤紫色、果肉はアントシアニンを含んだ紫色です。やや粉質で甘味があり、蒸し芋や焼き芋に適しています。
べにはるか(紅はるか)
2010年(平成22年)に品種登録されたさつまいもで、農研機構の九州沖縄農業研究センターが「九州121号」と「春こがね」を交配して選抜・育成した品種です。「紅はるか」と表記されることもあります。皮は赤紫色で紡錘形。甘味が強くて、貯蔵されたものは粘質でしっとりとした肉質になります。焼き芋やスイートポテト、天ぷらなどに適していて、口当たりはなめらかです。
シルクスイート
カネコ種苗が開発した品種で、親は「春こがね」×「べにまさり」。名前に「シルク」と付くだけあってなめらかな舌触りが特徴です。収穫後はやや粉質ですが、貯蔵すると粘質になりしっとりとした食感になります。甘味が強く、焼き芋やスイートポテト、菓子などにおすすめ。皮は濃い赤紫色で短めの紡錘形をしていて貯蔵性にも優れます。
各地の年間収穫量 さつまいも
円グラフと下表の割合(%)が違うときは?
上の円グラフの割合(%)と下の表の割合(%)の数値が違うことがありますが、その場合は下表のほうが正しい数値です。
下の表は出典である農林水産省のデータに記されている「全国の合計値」から割合を計算したものです。
上の円グラフも農林水産省のデータですが、こちらは全国ではなく主要生産地のみのデータなので、値が公表されていない都道府県は含まれていません。
出典:農林水産省統計
2022年のさつまいもの収穫量のうち最も多いのは鹿児島県で、約21万トンの収穫量があります。2位は約19万4,300トンの収穫量がある茨城県、3位は約8万8,800トンの収穫量がある千葉県です。
栽培面積・収穫量の推移
出典:農林水産省統計
2022年のさつまいもの栽培面積は約3万2,300ヘクタール。収穫量は約71万700トンです。出荷量は公表されていません。
サツマイモの輸入先と輸入量
出典:財務省統計
サツマイモは中国とインドネシアから輸入されています。中国からの輸入量は約3,826トンで、サツマイモ輸入量のほとんどを占めています。インドネシアからの輸入量は約68.4トンで、全体の約2%程度です。
年別輸出入量
出典:財務省統計
サツマイモは海外から輸入されています。2023年の輸入量は約3,894トンで輸入額は約3億951万円です。輸入量は前年と比べると475トン(約11%)減少しています。
主要生産国(上位5か国)
出典:FAOSTAT(2021年)
サツマイモ生産の上位5か国は、中国、マラウイ、タンザニア、ナイジェリア、アンゴラです。1位の中国の生産量は年間約4,660万4,009トンで全体の約54%を占めています。2位のマラウイは年間約805万1,118トンで全体の約9%、3位のタンザニアは年間約425万9,620トンで全体の約5%です。
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